私の知人が昨年5月に54歳で乳がん見つかり、薬剤投与等で治療してきました。当初は骨転移まで確認されました。がん数値は減少してきたと教えてくれました。3月末にもとの乳がんの摘出手術となりました。一般的にもとのがんを摘出すれば、その後症状が進行することはないのでしょうか? 1回/1年定期検査をしていれば、普通の生活が送れるのでしょうか?
あなたのご友人は、54歳で乳癌と診断された際、骨転移があったのですから、StageⅣということになります。通常StageⅣの患者様に、乳房の(部分あるいは全摘の)手術治療は致しません。何故なら手術では転移した部分をすべて切除することができないからです。ここで手術になった理由が何であるかは、判断した主治医ではないので解りかねますが、①局所が出血・潰瘍化等コントロール不能になるのを懸念して②原発巣である乳房を残しておくことが、医学的にあるいは患者心理的によくないと判断してということなのではないでしょうか? 小生はStageⅣ乳癌に対する乳房切除を否定しませんが、多くの乳腺外科医が「根治性がない」という理由で否定的です。遠隔転移が判明していない通常の乳がんの方に対する根治手術に対し、骨転移等の遠隔転移のあるStagⅣ乳癌に対する手術は姑息的手術と言い、意味が全く違うことを十分理解して手術を受けてください。
「がん数値」というのは腫瘍マーカーのことでしょうか?この値が低下しているとすれば、現在行っている治療法(化学療法・内分泌療法・分子標的治療・骨転移治療等の全身療法)がかなり効いている可能性があります。その効果を見るのだったら、入院して全身麻酔をかけて乳房を切除しなくても、局所麻酔下に針生検で病変の一部切除をすれば判明するはずです。
もう一つ重要なことを述べます。StageⅣの10年生存率は10%以下ですので、他の病気や事故にでも会わない限りは、この乳癌が死因になる可能性が高いと考えます。しかし今すぐというわけではなく、社会性が保たれ自立した人生が送れるのなら、しばらくは普通の方と同じ生活ができるわけですし、骨をはじめとする転移巣がなるべく身体をむしばまない様に、何とか抑えておく治療(現在有効な治療により腫瘍マーカーが低下しているようですが、このような治療のことです)にまい進されることが重要と考えます。(文責 久保内)