宜しくお願いいたします。39歳 6月26日に左乳房の全摘出手術+センチネルリンパ節生検2か所を受けました。同時にBRCA2の予防的処置として右乳房も全摘出しております。左乳房の術後の検査結果は、「•浸潤癌 • 腫瘍の大きさ 浸潤部1.8cm 乳管内進展 2.6cm • リンパ節転移の個数 0個/2 • リンパ管及び血管 侵襲なし • 段端 陰性 • 悪性度 2 • 増殖活性 Ki67 35% 中 • ホルモン受容体 ER 95%強陽性 PgR60%陽性 • HER2 陽性 2.4 乳ガン進行度 1期 ルミナルB HER2陽性」 との結果でした。現在 化学療法の選択肢を2つ頂いたのですが、決めきれないでいます。
1つ目
dose dense AC 2週間x4回 アドリアシン+ シクロフォスファミド その後 DHP 3週x4回 ドタキセル+ハーセプチン+パージェタ その後 HP 3週x14回 + ホルモン治療
2つ目 (ショックで確実に聞き取れたか怪しいです。ACを使わない選択肢として説明されたと思います)
Weely Paclitaxel その後DHP その後HP
1つ目で話しは進んでいるのですが、不可逆の心臓への影響やアンスラサイクリンの累積量で将来この薬剤が使えなくなることを知り、私の状態でこの選択肢が良いのか悩んでいます。調べてみると、HER2陽性の場合、TC療法からハーセプチン+パージェタなどもあると出てくるのですが、担当医師は否定していました。ドタキセルが重なるから出来ないと言われたのですが、いまいち理解が出来ませんでした。ACを使うことでの再発率の低下割合や、Weekly Paclitaxel を選ぶ理由、もしくはその他の選択肢を選ぶ理由、TC療法が出来ない理由を教えて頂けると幸いです。分かりにくい長文で申し訳ありません。宜しくお願いいたします。
現時点できちんと比較試験があって一番再発を抑える治療は、「1つ目」だと思います。アンスラサイクリンの心臓への影響の問題、Taxan+ハーセプチンの有効性が高いことから、weekly Paclitaxel + ハーセプチンを比較試験ではなく、単一療法として行ったところ、再発を抑える結果が、従来のアンスラサイクリン併用と遜色がなかった(ただし比較試験ではないので、厳密には本当にそうかどうかはわからない)ということで、腫瘤径が小さいHer2 Typeの乳がんなどで最近使われるようになっています。またweekly Paclitaxel+ハーセプチンにパージェタを足すというのも臨床試験はありませんが、パージェタを使ったどの臨床試験でも、ハーセプチン単独よりパージェタ併用の方が成績が良いので、併用しているという状況です。したがって、ガイドラインなどのようにきっちりエビデンスのある治療ということになると「1つ目」が採用され、最近の新しいデータも参考にしながら考えると「2つ目」となります。ただしweekly Paclitaxel の後はDHPではなくHPだと思います。 「ACを使うことでの再発率の低下割合」は、1つ目と2つ目の比較試験を行えばわかるのですが、現時点ではそれが行われていないので分かりません。Weekly Paclitaxel を選ぶ理由については、不勉強で済みません、どうしてその試験でweekly Paclitaxelを選んだのかは分かりません。効果や副作用など様々なことを考慮して、その試験の責任医師が決めたのだと思います。
TC療法が出来ない理由についてですが、TC療法というのはACと比較して再発をより抑えたということで有名になりましたが、ACとTaxanの組み合わせとの比較試験はなく、その優劣は不明です。絶対に化学療法が必要な例ではACとTaxanの組み合わせ、化学療法を行った方が良いかどうか悩むような症例では、治療期間も短いTCが選ばれる傾向にあります。最後にもう一つ補足すると、将来万が一再発した時に、貴女の場合はBRCA2に変化がありますから、副作用も少ない飲み薬のOlapalib(リムパーザ)が有効です。しかし、リムパーザの適応はアンスラサイクリン、タキサンを使用した例という縛りがあります。ですから、術後治療でアンスラサイクリンを使っていないと、再発時にもう一度アンスラサイクリンを使ってからでないとリムパーザは使えません。
このように現在の新薬が開発されている段階で、どの薬も現在の標準治療であるアンスラサイクリンとタキサンを使った症例を対象に臨床試験が行われることが多いので、新薬を使うときにアンスラサイクリンとタキサン既治療例という縛りが着くことが多くなることが予想されます。そういう意味でも、今回はACを選択した方が良いように思います。ACx4であれば、ほとんど心臓の副作用は心配ありませんし、ACを使って再発した場合に再度ACを使うことはありませんから、蓄積毒性の心配もありません。(ただし他のガンになってその治療でアンスラサイクリンを使わなければならくなった時はアンスラサイクリンの総治療量を考慮することが必要ですが)(文責 清水)