今後の治療についてご相談お願い致します。先日病理結果が出ました。同時性両側性乳癌で、悩んだ末、両側全摘手術を終えました。
右
ステージ1 PT1bN0M0、浸潤性乳管癌10×8㎜、リンパ節転移なし、リンパ管脈管侵襲1y0v0、エストロゲン>90%、プロゲステロン50%、HER22+fish陰性、ki 10%、グレード1
左
ステージ1、PT1cN0M0、アポクリン癌12×11㎜、リンパ節転移なし、リンパ管脈管侵襲1y0v0、エストロゲン0%プロゲステロン0%、HER22+fish境界域、ki <5%、グレードなし
右はルミナルとの事、左がトリプルネガティブなので、半年の抗がん剤治療が必要であり、再発を防ぐ為に強い抗がん剤になる。3ヶ月×3ヶ月抗がん剤をする事で、左だけではなく右にも抗がん剤は効く。トリプルネガティブはかなりの確率で3年以内の再発率が高い、また抗がん剤治療には家族の協力が必要になってくるとの話もありました。浸潤癌から術後アポクリン癌との事でしたが、アポクリンなど考える必要はない、あくまでも患者はトリプルネガティブだから抗がん剤しか治療法がない事だけを考えればよい。
抗がん剤をするなら早い方が良いですか?と質問したところ、5ヶ月以内ならば良いので、次回までに抗がん剤をするかしないか、いつからするか決めてくるようにと話がありました。抗がん剤をしなかった場合のデメリットを聞いたところ、やはりかなりの確率で再発をしますと言われ、一度考えますと返事をしました。今、アポクリン癌について、ki67が低値な事で、抗がん剤治療は必要か調べてみているところです。このような相談室があり、藁にもすがる気持ちでメールさせて頂いてます。
トリプルネガティブである以上、アポクリン癌だった事は考えずに抗がん剤治療を受けた方がやはり再発率は下がるのでしょうか? この場合、右側にも抗がん剤が効くからと言う事ですが、私としてはki値が<5%と低値である為、再発率を下げるとしてもどのくらい効果があるのか教えて頂きたいと思っています。ホルモン治療のみでは左には効かないと言われましたが、私としては、抗がん剤治療はせずにホルモン治療で良いのではないかと考えていますが、先生でしたらどのような提案をされますか? やはり抗がん剤治療しなければ、再発率高いでしょうか? ご教示よろしくお願い致します。
鋭いご指摘だと思います。私は主治医の先生の”アポクリンなど考える必要はない、あくまでも患者はトリプルネガティブだから抗がん剤しか治療法がない事だけを考えればよい”という考えには賛同できません。乳がんと診断されたら、まず浸潤性乳管がん(乳がん全体の約8割を占める)なのか特殊型乳がん(小葉がん、粘液がん、管状がん、髄様がん、アポクリンがん、化生がんなど)なのかを考え、浸潤性乳管がんであったならば、subtype別の治療法を考えます。しかし特殊型乳がんの場合はそれぞれに特徴があるので、その特徴に合わせた治療を考えます。例えば粘液がんや管状がん(ほとんどがER(+)PR(+)乳がん)は予後の良い(転移再発の少ない)乳がんなので、抗がん剤治療は行わず、内分泌療法を行うか行わないかを腫瘤径やリンパ節転移の有無などを考慮して決めます。小葉癌はさまざまな因子が浸潤性乳管がんに類似している乳がんなので、その治療は浸潤性乳管がんに準じてsubtypeを考慮して決めます。髄様がんはトリプルネガティブ乳がんなのですが、昔から予後が良い乳がんと知られているので、抗がん剤治療をすることはないと思います。化生がん(多くはトリプルネガティブ乳がん)は、予後の悪い乳がんなので抗がん剤が必須です。そこで問題になるのがアポクリンがん(全てトリプルネガティブ乳がん)です。アポクリンがんを調べていくと、予後が良いので抗がん剤は不要という説と、トリプルネガティブなので抗がん剤が必要という説と二つあります。説が二つあれば、医師は最悪のケースを考えるので、抗がん剤治療を勧める場合が多いように思います。ここから先は私の個人的な意見ですが、私の考えは前者の説です。その根拠の一つは、貴女が指摘しているようにKi67が低いこと。抗がん剤というのは基本的に細胞分裂している細胞に作用します。ですからKi67が低いということは抗がん剤が効きにくいと考えられること。もう一つはアポクリンがんの転移再発をみたことがないこと。予後が良いと言われている粘液がんでも転移再発した症例をみたことがありますが、アポクリンがんでは経験ありません。個人の経験というのは一番レベルの低いエビデンスなので、大きな声で人に言える話ではないのですが、私の患者さんでアポクリンがんの方には抗がん剤は使っていませんし、その方達で再発転移した方もいません。これはあくまでも私の個人的な意見なので、こういう考えの医師もいると思うに留めて頂き、他も調べてよく考えて決めてください。(文責 清水)