浸潤性乳管がん 左乳房部分切除 大きさ:2.4㎝ リンパ節転移なし(0/6) 軽度の静脈侵襲あり MIB-1:24% 組織学的悪性度:grade2 オンコタイプDX再発スコア:5 9年遠隔再発率:3% RS群における化学療法の上乗せ効果:<1%
現在は、無事に手術を終え、ホルモン療法のタモキシフェンを服用しながら放射線治療を受けていますが、主治医の先生からは、腫瘍の大きさと静脈侵襲があったということでS-1タイホウの服用を勧められています。やはり抗がん剤は副作用が気に掛かり、本当に自分の体に必要なのだろうかという思いが断ち切れず、どうするべきか悩んでいます。私のような状況ですと、やはりS-1タイホウの服用も必要なのでしょうか。もうすぐ、どうするのか返事をしなければいけないのでご教授頂きたいです。
メールには記載されていませんが、タモキシフェンを内服されているのでER陽性、ハーセプチンを使用していないのでHER2陰性と推察いたします。ER陽性・HER2陰性に対する術後療法として、内分泌療法にTS1を併用することの有用性を検証した臨床試験にPOTENT試験があります。対象は、①再発リスクが中等度または高度(試験の適格基準: 浸潤径2-3㎝・脈管侵襲+・組織学的グレード2で貴女の場合条件を満たしている) ②ER陽性かつHER2陰性の患者さんです。
5年間の標準的術後内分泌療法単独の患者群と、5年間の標準的術後内分泌療法に1年間のTS1を併用した群に分けて、浸潤性の病変の無い生存が延長するかを比較しました。結果はTS1を併用することにより浸潤性の病変の発生リスクが37%低減されたとなりました。
A)この結果については、乳癌診療ガイドライン(2022年版)では、再発リスクが高い場合(適格基準に当てはまる)、内分泌療法にTS1を1年間併用することを強く推奨しています。
B)一方、オンコタイプDXでは、化学療法の明らかな上乗せ効果1%以下。RS→5で9年再発率は3%と判定されています。
A )B)どちらかが間違っているというのではなく、POTENT試験を重視するのであればTS1を追加、オンコタイプDXの判定を重視するのであれば内分泌療法単独という考え方もありです。主治医に、治療費も含めて、お話しを伺い、納得のいく術後療法を選択してください。(文責 須田)