初発2020年6月42歳 全摘、タモキシフェンのみの治療。 乳管癌 硬型、 大きさ45×45×15mm 浸潤1.1、 グレード3 pT1cN0、 ER3b PgR3b HER20 ki-67 20%
病理の結果、浸潤部分が見つかりませんでしたが、針生検での浸潤巣になりました。
2023年45歳 腋窩リンパ節再発、 2/19陽性 ホルモン+ HER2− ki-67 31%
術後 ddecとddptxをしまして、これから放射線治療に入ります。これからのホルモン治療として、タモキシフェンを処方されました。「45歳なので、抗がん剤治療のせいで、このまま閉経になるかも。2年生理が来なかったら閉経後のお薬に移行。生理が来たらリュープリン追加」と言われました。私はタモキシフェン治療中の再発だったので、タモキシフェンは効いていなかったのかなと思っています。リュープリン+閉経後のお薬では駄目ですか? 神奈川県の病院ですが、処方可能でしょうか? Ts-1やベージニオのお薬も考えていましたが、初発ではないから対象ではないと言われてしまいました。
乳癌術後の腋窩リンパ節転移のみで遠隔転移が無い場合の考え方は様々だと思いますが、私は初発時に見つけられなかった微小転移が顕性になっただけだと考えています。「センチネルに無かったのに…」と言われるとは思いますが、センチネル陰性でもノンセンチネルのみへの転移もごく僅かながらあり得ます。術後治療としては、通常腋窩に1~2個のリンパ節転移だけであれば、リュープリンとタモキシフェンで十分と考える乳腺外科医は少なくありません。
また、タモキシフェンを内服しているのに、リンパ節の微小転移が超音波で判るほど増大したので、効果が無いと思われたかも知れませんが、術後の内分泌治療はその位効果がわかりにくいものです。タモキシフェンにしろAI剤(閉経後の薬)にしろ、術後の再発抑制効果は5~15%程度有るのですが、ステージ2ではその治療をしても再発する人が10%位有り、治療をしなくても再発をしない人が80%位あるのです。効く効かないという判断から言えば、AI剤でもそれ程効果は違わないことになります。またリュープリンを使用した上でのタモキシフェンの効果は、タモキシフェン単剤とは異なる可能性は否定できません。
とは言っても、内服していたのにリンパ節転移が診断されたので、タモキシフェンは「ゲンの悪い」薬に思えますよね。あなたのようにタモキシフェン服用中にイヴェントが起こったら、私もリュ-プリンとAI剤で治療します。神奈川県ではリュープリンとAI剤の併用が保険で査定されて使用できない時期が長く続きました。最近ではCDK4/6阻害薬という薬が発売されて、閉経前の患者さんにはCDK4/6阻害薬を使用する際に、リュープリンとAI剤を使わざるを得なくなったので、保険で査定されずに使用出来るようになっています。ご希望であれば主治医の先生に、リュープリンとAI剤をお願いしてみて良いでしょう。ただしリュープリンとAI剤を使用するとエストロゲンが枯渇するので、手指から始まる全身の関節症状を来す副作用が生じることがあり、AI剤をタモキシフェンに戻してもらって治療を続ける可能性も否定できません。主治医と充分ご相談の上、納得のいく治療を選択してください。(文責 久保内)