はじめまして。2年前に1.4㎝のしこりを指摘され、経過観察中でしたが、今回の検診で1.9㎝となっており、しこりに血流がみえるとのことで、針生検をしました。結果は良性とのことで、経過観察になりました。ただ、葉状腫瘍と線維腺腫の区別は針生検では判断が難しく、線維腺腫と言われていたものが切除して病理に出したら葉状腫瘍だったという話をよく聞きます。現在47歳になり、不安で食事も喉を通らず、胃も毎日痛く、このまま不安な気持ちで過ごすくらいなら、いっそ切除したいと思っています。ただ、現在診てもらっている先生には切除は反対されています。その為、別のお医者さんに診てもらったところ、葉状腫瘍は切除しないとわからないとのことで、局所麻酔でのその部分だけの切除か、葉状腫瘍だった時のことを考えて、全身麻酔でマージンをとっての切除どちらにするか聞かれました。そこで、質問なのですが、
1)良性だった場合、切除することによって起きるデメリットはありますでしょうか?たとえば、良性のしこりを切除してしまうと、その部分に新たにしこりができた時に超音波でみてもわかりづらくなってしまうなど、ありますでしょうか?
2)局所麻酔で切除して葉状腫瘍だった場合、追加切除が必要になるかと思いますが、最初からマージンを取って大きく切除した場合と、追加で切除した場合に違いはありますでしょうか? 2回手術を受けないといけないというデメリットはあるかとは思いますが、それ以外に追加切除の場合は、再発のリスクが上がるなどのデメリットはありますでしょうか?
3)もし、葉状腫瘍だった場合、今切除するのと、このまま経過観察して3㎝を超えた時に切除したのとでは、やはり結果は大きく変わりますでしょうか? 再発リスクが高くなるや、少し手遅れではないですが、早く取っておけばよかったと言った結果になるのでしょうか?
切除して、確定診断を受けて、早くこのストレスから解放されたい気持ちでいっぱいですが、切除することによってのデメリットも教えて頂けたら助かります。今診ていただいている先生は2人とも正反対の意見なので、とても迷っております。どうか助言をお願いします。
まず、葉状腫瘍についてのおさらいです。葉状腫瘍は線維腺腫に似ている組織像ですが、線維腺腫とは異なり、どんどん大きくなります。基本は良性腫瘍ですが、一部に転移を起こす悪性の葉状腫瘍もありますが、最初の切除標本からはっきり良悪性の診断がつかないことも多いです。また、大きくなるという特徴と共に、繰り返しできやすいというも特徴があります。切除標本を調べると腫瘍の周囲に小さい葉状腫瘍の芽があることがあるため、大きく切除することを勧める先生もいます。私は、基本的に良性腫瘍なので、腫瘤摘出(マージンなしで)し、次の腫瘍が出てくるまでの時間を調べます。次の腫瘍が早く出てくる場合(数ヶ月)は悪性のことが多いので、その場合は2回目で乳房切除をお勧めします。ゆっくり出てくる(数年)場合は、出てくるたびに局所麻酔下に腫瘤摘出をしています。
1)正常乳腺をつけずに腫瘤摘出だけであれば、変形もありませんし、術後超音波検査でも手術瘢痕が問題になることはありません。ただし、乳がんの時のように正常乳腺を含めて切除すると、超音波検査で手術瘢痕として描出されます。
2)乳癌ではないので、葉状腫瘍であっても追加切除は不要と考えます。(大きく切除する先生もいますが、どのくらい切除すれば良いという指針はありません)。ただし、またできやすいという特徴がありますから、定期的な検査は必要です。1回目で葉状腫瘍と診断がついているので、2回目以降、近傍にできた腫瘤は見つけ次第切除します。ですから、局所麻酔で小さい腫瘤のうちに切除できます。
3)葉状腫瘍はいつ切除しても問題ありません。ただし大きくなると局所麻酔での摘出が難しくなり(麻酔が十分効かない可能が出てくる)全身麻酔が必要となってしまいます。大きさの目安としては、3cmくらいまでであれば問題なく局所麻酔で切除可能で、頑張れば5cmくらいまででも局所麻酔でできることもあります。葉状腫瘍に手遅れという概念はありません。手術時の麻酔が局所麻酔でできるか、全身麻酔になるかの違いだけです。貴女の腫瘤は2年で14->19mmですから、葉状腫瘍だとすると極めてゆっくり増大しているので悪性の可能性は極めて低いと思います。現在の大きさであれば局所麻酔下の外来手術での切除が可能なので、心配しているのでれば切除すれば良いと思います。手術のデメリットは傷跡が残ることだけです。手術が嫌なら、もう少し(20mmを超えるまで)経過を見ても良いように思います。(文責 清水)