51才です。タモキシフェン内服中に肺転移が判明。主治医の先生には、咳がでるようになったらイブランスかベージニオを始めると言われています。ガイドラインでも、「早期に治療しても、症状がでてから治療しても生存期間に変わりはない」とありました。
CTで経過をみて、転移した腫瘍が、ある程度の大きさまで大きくなったり、胸膜に接している腫瘍が大きくなってきたら、症状がでる前に治療を開始することはありますか?患者さんの不安の度合いにもよるのでしょうか? 症状がでていなくても、あまり腫瘍が大きくなってくると、治療する上で不利になるのでしょうか(腫瘍が小さいうちのほうが治療の反応はよいのでしょうか)? 実際の治療はどうされているのか、お聞きしたいです。よろしくお願いいたします。
いつから転移性乳がんの治療を始めるかというご質問ですね。原則は転移と診断された時からだと思います。一つ目の問題は、どの様に転移であると診断したかです。例えば肺に一つの腫瘤陰影が現れたとしても、それが転移かどうかの診断は難しいですから、転移という診断が確定するまでは治療は始めません。両側に多発性にある腫瘤であるとか、生検をして確定診断がついたというならば、治療を開始すべきです。転移巣が小さくても大きくても、有効な治療であれば治療の反応は変わりません。しかし、転移巣の中でも様々な細胞の変化が起きているのですが、長い間置いておくと、治療抵抗性の遺伝子変異が起きてくる可能性が高くなります。できればそうなる前に治療を始めたいので、診断がついたら速やかに治療を開始することをお勧めします。『早期に治療しても、症状がでてから治療しても生存期間に変わりはない』というのは、化学療法の話ではないでしょうか。化学療法のように細胞を殺す治療では、細胞内での多少の変化は気にしませんが、内分泌療法では、腫瘍の増殖が女性ホルモンに依存しているという特徴が維持されていないと効果が発揮できません。内分泌療法では、ベージニオのように生存期間を延長させる治療法も出てきています。蛇足ですが、月経状況はどうでしょうか? もしまだ月経がある(もしくは月経停止したばかりである)ならば、まず月経を止める注射(ゾラデックス、リュープリン)が勧められます。次に、BRCAの遺伝子検査はお済みでしょうか? リムパーザというお薬の有効性が調べられます。(文責 清水)