3年前、次男授乳中に乳がんステージⅢが見つかり、両胸全摘出とリンパ腺転移摘出の手術をしました。検査によると、ホルモン治療が聞かないと言われ、抗がん剤(パクリタクセル)を使用し、放射線治療は必要がないとの判断で経過観察をしていました。通院を始めて1年くらいたつ頃、妊娠が発覚。検査のため、出産を終えてからまた通院の約束をし、現在無事臨月を迎えることができました。妊娠中、胸がかゆくなる事があったり、乳房が以前の妊娠の様に色が変色していましたが、張ることはなかったです。妊娠中期のころ、乳房の先にカスのようなかたまりは出来ましたが、まさか授乳の準備に入っていると思いませんでした。子宮口を刺激するため、お風呂で乳房を刺激してみたところ、黄色い母乳のようなものが両胸から出てきました。しばらくたった今も、母乳を作っていた時のように胸がじわじわ熱くなる感覚が残っています。赤ちゃんが産まれたら母乳が出る可能性があるのでしょうか? 手術をおこなった主治医は、手術前に、子供がまだ欲しいので、授乳が出来るのか聞いたところ、出来ないとはっきり言われていたので、何がおきたのか分からず、びっくりしています。
なたのような全摘術後の分泌症状が出現した患者さんの経験はありません。しかし、上下肢の切断術後に幻肢と言って存在しない四肢の先端の感覚異常がおこることがあります。すなわち、乳房切除術後に乳頭がないのに乳頭のかゆみなどを訴えるかたがおられます。
1.両側乳腺全摘術を施行されたとのことですが、全摘術の場合、両側の乳頭乳輪も切除するのが原則です。したがって、乳頭がなければ、通常外部への分泌はありません。乳頭が残っている場合には、乳頭直下の少量の残存乳腺から分泌がある可能性があります。
2.乳頭を切除した場合、先天的に副乳および副乳頭がある場合には、痕跡程度でも分泌がありえます。副乳の存在は、以前の授乳の時に気づく場合が多いです。
3.副乳頭もない場合、想像でしかありませんが、乳腺が発達していた時期の手術であったため、乳腺の一部が残存していて、その乳管が創部などの皮膚に開口しているということもあるかもしれません。
いずれにせよ、乳汁分泌だとすると、乳腺が残存している可能性があり、少量ですが、あらたな乳がんの発生母地になりえます。定期的な乳がん健診が必要と思います。また、授乳の時期が終了すると分泌は止まるはずです。(文責 徳田)