2011年に乳がん初発で、右乳房全摘後、パクリタキセルとEC療法での抗癌剤治療を行い、その後ノルバデックスを服用しながら経過観察をしていました。ところが2020年12月に左腸骨への転移が発覚し、現在イブランス、フェソロデックス、ゾラデックスにて治療中です。53歳です。イブランスによる治療を3クール終了しましたが、腫瘍マーカー(特にCA15-3)がずっと上がり続けています。
7.0(再発前)→14.7(再発直後)→19.6(1クール終了時)→23.5(2クール終了時)
そして今回3クール終了時の値は、はっきり教えてもらえなかったのですが、基準上限値ギリギリの30ぐらいだったようです。ただ今回撮影した造影CTでは明らかな変化は見られませんでした。主治医は、「いまの薬が効いてない可能性はある」としながらも、効いている場所もあるかもしれないとのことで、薬の変更はせず、基本、これから3ヶ月毎に行う造影CTの画像上で明らかな増大が認められるまでは今の治療を進めるとおっしゃいました。そこでご質問がいくつかあります。
① アロマターゼ阻害薬を使った治療法に変えたら治療効果は上がるのか? また、私はほぼ10年前の抗癌剤治療の時から生理は1度もないのですが、以前、血液検査の結果、閉経前と診断され、閉経後の薬は使えないといわれてます。それをなんとか使えるようには出来ないのか?
② もしすでにガンのサブタイプが変わり、ホルモン治療が効かないガンが疑われるのであれば、画像上の増大を待たず、早めに抗癌剤治療に変えるべきなのではないか?
③ 画像検査が造影CTなのは何故か?骨シンチやPET検査は通常どのような場合に行うのか?
質問は以上の3つになります。長々と申し訳ありません。どうぞご回答よろしくお願い致します。
ご質問有り難うございます。再発してしまった病変に対しては、もちろん消えて完治してくれればいいのですが、画像診断の限界もあり、また画像上消失しても、治療をやめにくく、結果的に効果、副作用をみながら症状の安定を目指すというのが基本的な考えです。また、治療薬の選択肢も限られているので、一つの治療法を大事に使いつつ、言葉は悪いですが、騙しながら続けていくというのも大事な考え方です。その中で、マーカーの上昇を心配しておられるわけですが、マーカーの上昇だけでは、効果判定はできず、画像診断との総合判定が必要です。したがって、大きな症状なく、CTでも、肺、肝などの臓器転移がないのであれば、現状の治療を継続するというのは適切な方針と思われます。これらを踏まえ、以下、回答します。
(1) タモキシフェンを内服中の採血では、閉経状況を適格に判定できないと言われ、また、化学療法後に閉経され、1年、月経がないとのことなので、一般的には閉経後と判断されますが、採血上、エストロゲンが高いのだとすると明確に閉経後と判断できないとされているのだと思います。仮に閉経後とするならゾラデックスを抜いて、フェソロデックス+イブランスがベストな治療法なので、アロマターゼ阻害剤+イブランスにしても効果は少ないと考えます。
(2)本当に無効とするなら、骨生検など行いホルモン感受性をみるのが妥当だと思いますが、骨生検は侵襲も大きいので行うには慎重な判断が必要です。また上述したように、再発乳癌は完治が難しいとしたら、化学療法を開始するのは後にするべきで、画像上、明らかな進行、新規病変が無い状態で、また画像を行わず化学療法を行うのはお勧めしません。
(3)臓器転移があれば、化学療法を含めて治療法を変更する必要があるので、CTで肺、肝転移がないかどうかを見ているのだと思います。PETは保険適応上の問題から、CTや骨シンチなどで疑う病変があったときや、腫瘍マーカーが明らかに上昇傾向にあるなか、画像でも病変がつかめない時行います。長くなりましたが、いずれも主治医とよく相談の上、治療を勧めて下さい。(文責 鈴木)