はじめまして、よろしくお願いいたします。45歳女性です。小学校・幼稚園児の子どもがいます。2020年2月22日に左乳房全摘+リンパ節郭清(レベル2)を受けました。
腫瘍径30×20mm
ER score 8、PR score 8(共にtotal score)
Her2 スコア0
MIB1-index (invasive front)10%
【Breast left excision】
Invasive ductal carcinoma
pT2(size of invasion 3.0cm)
INFa, g(+)f(-)s(-)ly(-)v(-)
EIC(-)ICT(-)NCAT(+)
nuclear atypia:score 2, number of mitotic figures:score1,
nuclear grade 1
[中間報告]
左乳腺切除検体では、30×20mm大の腫瘤を認める。同部では異型細胞が篩状構造を呈して充実性に増成している。乳管癌である。間質はほとんどなく、HE標本では間質浸潤の有無の判定が難しいが、リンパ節転移をしていることから、浸潤性乳管癌を強く疑う。免疫染色で検討する。主結節の周囲にはDCISの像が広がっている。センチネルリンパ節は迅速レポートの通り癌の転移を認めるが、その後覚醒されたリンパ節には明らかな転移を認めない。
[最終報告]
p63, CK5/6の免疫染色の結果充実性結節部には上皮のニ相性がみられず浸潤巣と判断した。
【リンパ節】
術中迅速診:
提出されたセンチネルリンパ節には約3mmの範囲に癌の転移が認められる。
リンパ節最終報告:
提出されたセンチネルリンパ節には、複数の領域で癌の転移が認められ、micrometastasisに相当する
※その他 郭清された、レベル1の21個・レベル2の4個のリンパ節は、転移はありませんでした。
【質問】
1) サブタイプは、ルミナルAでよろしいでしょうか。
2) ステージ2b、ルミナルA、リンパ節転移1個、この場合、10年後の生存率および無再発生存率は、どの程度でしょうか。
3) 主治医からは、「EC療法+ドセタキセル+ホルモン療法」を勧められました。本来、ルミナルAなら単独ホルモン療法の適応だけれども、私の家族背景(幼児あり、15年以上の長期生存を目指したい)、腫瘍径が大きい、私の性格(万が一再発したらとても後悔する)を重く見て、化学療法を追加したいとのことでした。情報収集していくうちに、オンコタイプの存在を知りました。オンコタイプの結果では、「化学療法を追加すると、ホルモン単独よりも逆に5年生存率が落ちる」という結果が出た人がちらほらおられるのが気になりました。私もその可能性があるのではないかと。オンコタイプに出した方がよろしいでしょうか?
ただ、オンコタイプは、5年または10年での遠隔再発率までしか出ていません。私のように、15年・20年・30年の無再発長期生存を切望する場合は、predict(15年でホルモン療法上乗せ+4%、化学療法の上乗せ+3%)を信じて、抗癌剤を行うべきでしょうか。個人的には、15年後に+3%は、けっして無視できない率だと感じています。化学療法をすれば、ルミナルAであっても、15年後の無再発生存率は、度合いはともかく(とはいえ出来れば3%以上)、必ず向上するのでしょうか?
4) 主治医は、セカンド・オピニオンやオンコタイプには協力的です。ただ、そこに時間を取られて初期治療が遅れるくらいなら、抗癌剤治療に時間を振り向けた方が良いのではないかということで、迷いが出ています。
5) 病理報告書の、EIC, ICT, NCAT の意味が解りません。
6) センチネルリンパ節転移は、3mmの領域に複数あるとのこと。これは[micro metaの集合体]ではなく、macro metaになるのでしょうか?
7) 当初、嚢胞内癌を疑われていました。「嚢胞内癌であれば、”上皮の二相性がない”ことは自然な流れです」…などということにはならないのでしょうか?
1)ER、PgRともに陽性、MIB1-index(=Ki67)が10%と低値ですのでルミナルAになります。
2)生存率85-90%程度、無再発生存率80-85%程度であると思います。
3)4)オンコタイプDXを利用することで、化学療法を上乗せするべきかどうかの貴重な情報にはなりますが、絶対的な判断材料ではありません。これら統計はあくまでもこれまでの乳がん患者さんの結果であって、これから治療を始める方の数字ではないからです。一方で主治医の先生がおっしゃった「貴女にとって後悔しないために・・・」という言葉はとても重要な言葉であって、治療の選択はすべて貴女の心の中に答えがあるのだと思います。死んでも化学療法は受けたくないという方もいれば、多少つらくてもできる限りの治療は受けて安心を得たいという方もいて、それぞれの希望に添った選択が正しい治療の選択になると思います。貴女の性格まで考えて治療を考えてくださる主治医の先生のご意見はとても貴重であると私は考えます。
5)EICは非浸潤癌の広範囲の拡がり(extensive intraductal components)を示していると思われますが、ICT,NCATは私にはわかりません。
6)micro metaの定義は、リンパ節の中にある転移の最大径が0.2mm~2mmであるものをさします。3mmの領域に2mm以下の転移が何個か合ったとすれば、それはmicro metaになります。
7)micrometaとはいえリンパ節に転移しうる乳がんであることは間違いなく、このことからも嚢胞内癌でなく浸潤性乳管癌と考えて術後加療を検討するのがよいと考えます。(文責 谷)