No.11856 2015乳癌診療ガイドラインについて

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2016.02.23 Y 0 Comments

これからの治療を考えていくにあたって、以下の事を教えて欲しく思います。長文恐縮しています。どうぞよろしくお願いいたします。
1) (乳癌診療ガイドライン2015~P34のATLAS試験内容について)
タモキシフェン10年投与と5年投与を比較したATLAS試験で、10年投与群が術後10年以降の再発率を3.7%(リスク比:0.75,95%CI:0.62―0.90),死亡率を2.8%(リスク比:0.71,95%CI:0.58―0.88)減少させた。とあるのに対し、aTTom試験では、タモキシフェン10年投与群で再発率を低下(リスク比:0.85,95%CI:0.76―0.95)させ,投与10年目以降の乳癌死亡率を低下(リスク比:0.85,95%CI:0.76―0.95)させたとありますが、aTTom試験では具体的にどの程度再発率や死亡率を下げたのでしょうか? ATLAS試験に比べ、あまり良い結果が出なかったと聞きました。

2) (乳癌診療ガイドライン2015~P34のATLASとaTTomの統合解析内容について)
「10年投与群で乳癌死亡率比は25%(リスク比:0.75,95%CI:0.65―0.86)低下させることが示された。」とありますが、ATLASとaTTomの統合解析の結果が、乳癌死亡率比は25%に対してATLAS試験の死亡率を2.8%下げたのでは大きな差があるように思うのですが、この差はどういうことでしょうか? 実際タモキシフエン5年と10年では、どの程度の利益があるのでしょうか? (リスク比:0.75,95%CI:0.65―0.86)の具体的な意味を教えてください。

3) (乳がん診療ガイドライン2015~p33の背景・目的の内容について)
「閉経後ホルモン受容体陽性乳癌の標準的術後内分泌療法はタモキシフェンの5年投与であったが,ランダム化比較試験により,OSの改善は明らかでないものの,DFSを統計学的に有意に改善することが示されたため,アロマターゼ阻害薬を含む治療法が標準治療となった。しかしながら,タモキシフェンとのDFSの差はあまり大きくはない。」とありますが、これはタモキシフエン5年とアロマターゼ5年を比較してDFSの差が大きくないと言っているのでしょうか? それともタモキシフェン5年とタモキシフェンとアロマターゼ阻害剤を5年のうち2~3年含む治療との差のことを言っていますか? アロマターゼ阻害薬を含む治療法の具体的な内訳を教えてください。DFSの差は、数値的にどれくらいの差なのでしょうか?

4) (乳がん診療ガイドライン2015~p33の解説の内容について)
「ATACとBIG 1―98のメタアナリシスの結果、タモキシフェンの5年投与 アロマターゼ阻害薬の5年投与 の比較を統合したメタアナリシスの結果では,観察期間平均5.8年の時点で、アロマターゼ阻害薬はタモキシフェンに比較し,再発リスクを23%減少(リスク比:0.77,SE 0.05)させたが,乳癌による死亡は有意に減少させることができなかった(リスク比:0.89,SE 0.07)2)。」とありますが、観察期間平均5.8年の時点で、アロマターゼ阻害薬はタモキシフェンに比較し,再発している人は23%少なかったけれど、再発してクオリティーライフが落ちていような状態であっても生存している人も含めて同等だったということですか?

5) (乳がん診療ガイドライン2015~p33の解説の内容について)
レトロゾール2年治療後にタモキシフェンにスイッチして合計5年治療した群と、レトロゾール5年単独群と比較して再発イベントに有意な差はなかった、つまりレトロゾールをどの時期でも入れ混むならレトロゾール5年と変わらない効果があるという風に解釈していいですか? ここでタモキシフェンのみで治療した時の差はいくらぐらいになると予想されますか?

6) (乳がんガイドライン2015~P35・上段)
再発リスクが低い場合には,アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの再発リスクにおける絶対値の差は小さく,大規模臨床試験の結果を受けてタモキシフェンの10年投与が推奨されたため,併存症や投与した際の有害事象を考慮して,タモキシフェンを投与することは妥当である。
上記について、再発リスクの絶対値の差は、具体的数値はおよそどれくらいになりますか?

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2019.01.13 大西 0 コメント

1) aTTom試験では10年投与群で5年投与群と比較して術後10年の再発率を1.2%、死亡率を0.2%低下させ、術後15年ではそれぞれ3.7%、2.8%低下させています。
2)  ある疾患に対してA薬では再発率が4%で、新薬Bでは再発率を3%に減少することが出来たとします。B薬は死亡率を1%下げたとも言えますし、25%減少させた((4-3)÷4×100=25%)とも言えます。同じ結果でも表現の仕方によっては大きく見せることも、小さく見せることも出来ます。
3)  タモキシフェン5年とアロマターゼ阻害剤5年を比較した統合した解析では再発率を23%減少させたが、乳癌による死亡を減少させることは出来ませんでした(ガイドライン解説より)。試験によってはタモキシフェンとアロマターゼ阻害剤を合わせてと5年とするようなものもありますが、統合解析には組み込まれていません。
4)  5年での再発率を12.6%から9.6%に減少させることができましたが、死亡率の減少は5.9%から4.8%と統計的な有意差はありませんでした。観察期間の短さのため有意差が得られなかったのか、再発後の治療(アロマターゼ阻害剤)が効いたことで、長期生存が得られたことが推測されます。
5)  レロゾール単独群とタモキシフェン単独群の5年再発率はそれぞれ85.5%、 82.0%で、8年再発率はそれぞれ76.4%、72.0%です。また5年生存率はそれぞれ91.8%、 90.3%で、8年生存率はそれぞれ85.4%、81.4%です。レトロゾールをどの時期でも入れ混むならレトロゾール5年と「あまり」変わらない効果があるという風には解釈できるかと思います。
6)  アロマターゼ阻害剤投与群はタモキシフェン投与群の再発リスクを23%減少するとされています。ここの再発リスクは腫瘍径やリンパ節転移などにより左右されますので、仮に10%の再発リスクなある方であればアロマターゼ阻害剤で再発リスクを2.3%下げることができますし、20%の再発リスクのある方であれば再発リスクを4.6%下げることができます。

以上ガイドラインの解説というような内容になりましたが、ガイドラインはあくまでもカーナビのようなもので、大きく外れることはありませんが、個々の患者さんにとって最適の治療は必ずしもガイドラインと同じではないことも付け加えさせていただきます。(文責 大西)

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