現在54歳、44歳の時に右乳房全摘。腫瘍径 1.0cm×0.6cm、 乳管内癌の広がり4.6㎝×1.4㎝、 腋窩リンパ節郭清 転移の数 15個/0個、 組織型 硬癌、 グレード 1。
Nuclear atypia Score2(細胞核の異型度はスコア2で中程度)、 mitotic figures 3/10HPF(SWH10X):Score1,(細胞分裂は軽度)、 ホルモン受容体エストロゲン4+(50パーセント以上)、 ホルモン受容体プロゲステロン 4+(50パーセント以上)、 HER2 2+ FISH陰性(FISHスコア1.19)、 1y0(HE),v0(HE)、 Ki67 15%
治療経過
・ノルバデックスとゾラデックス 治療期間6年
・無治療期間(9か月と10日)を経て生理が再開し閉経後のAIは数年先であることが判明したのとノルバデック10年のエビデンスが出たのをきっかけにノルバデックスを再開
・ノルバデックス単独2年11カ月服用中
ホルモン治療9年目を迎えようとしていますが、ここにきてノルバデックス服用期間にノルバデックスの代謝酵素CYP2D6を中程度阻害するとも言われている降圧剤アムロジピンを服用したのが2011年12月から3年半程あったということが判明しました。3年半の間薬効が激減したかもしれない事と、以下の理由でしっかりした治療を希望しています。
① Ki67の値が15%と微妙なラインであること
② 自身の病理が10年経過して晩期再発を起こすと言われているタイプに似ている。
腫瘍径5㎝以内・核グレード1または2・ホルモン陽性・リンパ節転移陰性…など自分の病理に当てはまることが多い(乳がん学会抄録集より抜粋)リンパ管侵襲多いはありませんでした。
質問1) 以下考えられる治療①~⑥でどれがいいでしょうか?
治療① CYP2D6を中程度阻害薬とも言われているアムロジピンとノルバデックスを一緒に飲んだことで3年半の間ノルバデックスの効果が激減したかもしれないがあと1年ノルバデックスを服用し、ノルバデックス10年という治療を完了する。
治療② CYP2D6の遺伝子検査をしてノルバデックの効果が期待されないタイプであればゾラデックス+エキセメスタン(SOFTとTEXTの統合解析の成績がよかったので)を2年追加する。(ホルモン治療期間11年になってしまいます)CYP2D6の遺伝子検査に明確なエビデンスはないのは承知していますが否定もできないため遺伝子検査にトライする。
治療③ CYP2D6の遺伝子検査をせずゾラデックス+エキセメスタンを2年追加する(ホルモン治療期間11年になってしまいます)
治療④ いったん無治療となり血液検査で閉経を確実に確認してからAIを2年~3年投与する。現在閉経はしていなくおそらく2~3年先になると思われます。
治療⑤ あと1年ノルバデックスを追加しノルバデックス10年を完了し閉経を確認して、薬効が落ちていたことを考慮し、AIを2年追加する。(標準治療からは離れていることは承知しています)
治療⑥ ノルバデックス5年半の間は薬効が落ちていなかったので薬効が落ちていた3年半をノルバデックスを飲んでいないと仮定して閉経を確認してAIを5年追加する。
質問2) ノルバデックスの代謝酵素CYP2D6を中程度阻害するとも言われている降圧剤アムロジピンを服用したことで、どのくらいの薬効が落ちていると考えられますか? また薬効が落ちている期間があったことで、これからの治療を考えなおす必要がありますか? アムロジピンの情報はここから知りました。http://nyugan.info/tt/topics/pdf/topics34.pdf
質問3) 以下の理由で治療④⑤⑥の治療がいいと感じていますが、以下の論理はあっていますか?
MA17試験のデザインが自分に似ている事と、リスクに関係なく再発リスクを75%低下させたという結果。生存率に変化はなかったのでしょうか? 私はほぼ9年タモキシフエンを服用していますが、3年半の間はタモキシフエンの薬効が落ちていたと考え、タモキシフエン5.5年と仮定することはできませんか? BIG1-98試験ではリスクが高い人のみがAIの恩恵を受けた結果が出ましたが、MA-17試験ではリスクに関係なく再発リスクを75%下げたという矛盾をどうとらえますか? 私のリスクで私の場合AIを入れ混むことでどのような恩恵が受けられると考えられますか?
質問4) タモキシフェン初期治療に続いてAIを投与した数々の試験のほうが、唯一の内分泌療法としてタモキシフエン投与したものより生存率は明白な影響は見られなかったものの、再発率低下がみられたことや生存率がよくなっている試験も多数あり、治療にAIを入れ混むメリットはあると感じています。エビデンス的にはOSに明白な影響はなく、DFSを3%くらいあげると認識していますが、この考えで間違いないでしょうか? NCCNガイドライン(2014・MS27)には、ER陰性患者を除きタモキシフェンを唯一の内分泌療法として投与した場合よりAIを入れ混むことで全生存率に利益が生じるとありました。この矛盾をどうとらえるのでしょうか? AIを入れることでOSを延ばすさないのであれば、AIを入れなくてもいいという思いと、OSが伸びる可能性があるのならAIを入れ混みたいと感じています。
質問5) TEAM試験の結果からエキセメスタン単独とタモキシフエン2~3年+エキセメスタンで成績が変わらない。つまりエキセメスタン2年を入れ混むことでタモキシフエン単独の治療より効果があるという事なのでしょうか? そうであれば私の治療に2年間AIを入れ混む意味はあると考えますが、この論理であっていますか?
質問6) NCCNガイドライン(2014MS-30)閉経前術後内分泌療法タモキシフエン4.5~6年間の後アロマターゼ阻害剤を5年間(カテゴリー1)という推奨治療がありますが、これを私に当てはめようとするとアロマターゼ阻害剤を5年しなければならなくなります。私に当てはめようとするのは無理がありますか? それともTEAM試験の結果と合わせてアロマターゼを2年追加するだけでも効果があるととらえるのでしょうか?
質問7) 閉経まで数年かかることから無治療になることの不安も感じています。閉経を待たずしてゾラ+AIの治療②と③を考えた時、以下の事が気になります。
ABCSG—12ではOSがアナストロゾールで有意に不良であり、DFSも延長しなかった。SOFT,TEXTでは無病生存率を3.8%有意にさせたが、OSはエキセメスタンでやや悪い傾向にあるのでしょうか? 具体的にどの程度悪かったのでしょうか? 数値を教えてください。OSがLHRH+EXEでやや悪い傾向にある(102 vs 92 deaths; HR 1.14, 95% CI, 0.86–1.51; P=0.37)
ゾラ+AIがOSを低下させているとしたら、ゾラ+AIをあえてする必要がないとも感じています。ゾラ+AIは保険適応外になりますか?
質問8) もしゾラデックス+エキセメスタンあるいは閉経を確認してAIの治療をするとしても、骨には十分な事をしておきたいと感じています。44歳から50歳までゾラデックスをして骨にはリスクを負わせている事。現在の大腿骨の骨密度が若い人と比較して80%になっている事。骨密度は毎年3%ずつ下降しています。もし薬を使うとしたらビスフォスフォネートのどんな種類がいいですか? またカルシウム1200~1500mg/日 非活性型ビタミンD400~800U/日は必要でしょうか?
1) 現在あるエビデンスからは、10年間ノルバデックス内服をお勧めします。
2) アムロジピン併用した場合の臨床試験がありませんから、どの程度薬効が下がったかは不明です。
3) 9年間Tamoxifenを内服しているので、MA17試験とは条件が異なると思います。Tamoxifen内服を)年から5.5年に短縮する根拠がありません。BIG1-98とMA17、たとえ結果が矛盾していてもそれぞれ真実です。AIを追加することでどのような恩恵があるかはわかりません
4) AIを投与した試験は全て閉経後の方を対象とした試験です。ですから、貴女にAIを追加するmeritを証明した試験はありません。それでも、あなたがAIを内服したいとお考えであれば、主治医の先生とよく相談をしてください。
5) TEAM試験の結果は、その通りです。閉経前でTamoxifenを9年内服した貴女には、この試験の結果は当てはまらないと思います。2年追加する意味があるかどうかはわかりません。
6) 貴女は既にTamoxifenを9年内服しています。ですから、貴女に当てはまる臨床試験はTamoxifen 5年vs 10年の試験結果のみで、その結果からTamoxifen 10年をお勧めします。完全に閉経したとして、AIを2年追加だけで効果があるかどうかはわかりません。
7) データ以前に、ゾラ+AIは保険適応がありません。
8) 閉経後の方でAIを内服する場合、Denosmab(60)(プラリア)を併用することは骨密度の減少を抑え、骨折が減少したというエビデンスがあります。それ以外の骨粗鬆症の治療薬については整形外科の先生に相談してください。(文責 清水)